【活動報告記事】2024年1月11日
ご自身の事業に直接かかわるものではありませんでしたが「ヒューマンエラー」が、今回の事故原因の一つとして指摘される中、エンジニアとして多くの疑問が湧いたとのことで、タイムリーな話題として取り上げることとしました。
結果ですが、他の会員の皆さんからも積極的な発言があり大変盛り上がりました。
まず問題意識の根幹にあったのは、例えば自動車が自動運転に向けて急速な技術進歩を遂げている中、航空管制において管制官とパイロットとの間の無線交信という“アナログ”な運用がいまだに継続されているのはなぜか?という点でした。
これについては、世界中を飛び交う航空機を受け入れる空港の設備は“国際標準化”されている必要がある、という論点があることが分かりました。
つまり、たとえ優れたセンサーシステムや警報システムが開発されたとしても、国際標準技術としての航空管制システムは例えば発展途上国の空港でも実現可能なものに合わせていく必要があり、容易に変更・更新することができないということのようです。
さらに、航空管制が「コミュニケーション技術」である性質上、交信相手の航空機側の装備にも直接関係しています。
つまり、非常に高額な航空機の頻繁な装備変更自体が困難であること、今回のエアバスA350のような大型機からビジネスジェット、プライベートなセスナや軍用機まで多種多様な航空機がすべて対応する必要があることも関係してきます。このようなことから、航空管制システムのDXはどうしても保守的な運用とならざるを得ないようです。
次に議論したことは誤認識の問題です。 自動車の自動運転と同様、どんなに技術が進歩しても完璧なシステムは存在せず、誤認識する可能性があることを前提に運用する必要があります。
したがって、ヒューマンエラーを防ぐ様々なフールプルーフやフェイルセーフシステムを構築したとしても、誤認識の可能性がある以上、人の命がかかるものについては最終的な判断は人間が担う、ということになるのでしょう。特に羽田のような過密空港の管制においては、システムと人間の”協働”はかなり複雑なものになるでしょう。
このように、航空管制システムのDXは簡単ではないことが分かりますが、今回のような事故を経験すると“それでも何かできないか?”という強い衝動を感じるのも事実です。ベースラインとしての国際標準技術に加えてオプションとして改良技術が存在するように、羽田の航空管制システムをベースラインを崩さない範囲で少しでも改良することは可能かもしれません。
つまり、今回の羽田の事故を千載一遇の機会として捉え、創意工夫して生まれた技術が羽田空港の安全ブランドに繋がり、次の国際標準技術として普及させていくことができれば良いのではないか、といった結論となりました。
今回は少しイレギュラーでしたが様々なテーマについて“自分事”として議論できる当会のポテンシャルがまたしても示されたセッションとなりました。
当会ではこのような幅広いテーマについて新たなご相談をお待ちしております。